「先生が辞めたら、うちの病院はもたない」
責任感のある先生に対する殺し文句です。そう言われて「しょうがないなあ」と思って内心嬉しい先生。あなたはナルシストです。ナルシストとして死ぬのは勝手ですが、医療機関は先生のそんなナルシスト振りにほくそ笑んでいます。先生がいなくたって病院は廻ります。「自分がいなけりゃ」なんてファンタジーです。辞めてみればわかりますが、医局を辞めるということは驚くほどあっけないものですし、自分がいなくなっても何事もなかったかのように廻っていきます。
幻想に踊らされるのはもうやめましょう。先生を使い捨てにして、次は別の兵隊を使うだけ。代わりはいくらでもいるのです。
研修医の頃から土日出勤は当たり前、夜中に呼ばれれば当然病院に行く。そんな生活が10年目以降も続く。そんな先生が今でも少なくないと思います。家庭を顧みられず、結果家庭に居場所が無い。かといって趣味に生きる時間も無い。年老いて家族に見捨てられる哀れな老人を医療現場でたくさんご覧になっていると思いますが、明日のあなたの姿です。
勤務医の典型的な生活です。
「俺はこれでいいんだ」
と言われてしまえはそれまでですが、そういう先生は定年になった途端に産業廃棄物です。それでもいいのですか?
そんな生活にピリオドを打ちたい。そんな先生は、まず医局を上手に辞めましょう。
晴れて医局を辞めたら、まずは非常勤主体の勤務にシフトすることをお勧めします。今の時代、医師は幸いなことに何処でも求められる存在です。通勤する範囲を少だけし広げてみてください。今まで見えなかった無限のフロンティアがあることに気づくでしょう。従来は凡そ不可能であった週休2日は当然ですし、何より9時5時で自宅に帰れます。家族との時間を大切にできます。組織に漫然と依存していたら安心なんて幻想です。自分の身は自分で守るこのご時世。家族以上に大切なものは無いでしょう。
非常勤の求人は知り合いから紹介してもらうのも悪くありませんが、割の悪いものがあっても断りにくいのが難点です。「あれは嫌だ、これは嫌だ」と言っていたら友人を無くします。一方、医師紹介会社経由ならいくら選り好みしても問題ありません。非常勤生活を軌道に乗せるにはある程度のボリュームの定期非常勤案件を確保せねばなりません。友人から割の良いアルバイトばかり紹介してもらえる先生は幸せですが、現実にそううまくはいきません。友人から割の良いのを一定量、業者経由で(生活維持のための)一定量をまず確保し、業者にはわがままを言い続けて良いバイトが来たら順次乗り換えて美味しくないバイトは切っていく、という戦術でスタートを切りましょう。