医局辞める

「医局をいつ辞めるか? 今でしょ!」は誤り

大学病院医局を喧嘩せずに辞める

先生が医局をお辞めになりたいと初めて思われた時期はいつですか?

一般的に、後期研修を終えたとき、学位を取得したとき、取るべき専門医を全部取得したときが一つの節目となるようですね。

医局というのは株式会社とは違います。正式な雇用契約を持つ、法的拘束力を受ける組織ではありません。新・臨床研修制度によってゆっくりと牙を抜かれつつありますが、教授というボスを頂点とした、掟で繋がったマフィアのようなものと言えます。医局のネットワークに所属して大学病院や関連病院を廻るうちに経験を積んでスキルが習得され、大学院に入って研究すれば研究者としての実力もつき、大学内外での人脈もできます。この過程をひと通り終えるには10年程度はかかります。苦難の道ですが、耐え抜けば一人の医師として自信がついてきます。

しかし、医局は極端なピラミッド型社会です。極論すれば、教授以外全部下っ端と言えます。どんなに頭が良くても、人間的に優れていても教授になれるとは限りません。現職の教授と年が近すぎれば、退官する頃には自分も年をとり出馬のチャンスを逸してしまいます。運がかなり大きいのです。頑張ってきた実力者でも、自分は講師止まり、准教授止まりだと先が見えてしまえば、虚しくなってレースから降りてしまうものです。

上層部は言うに及ばず、末端の医局員はそんなレースとは無縁で、関連病院をグルグル廻ります。医局の立場で言えば、大学に在籍しながら地方の病院で臨床を学んで経験を積んでもらうんだ。立派な研修システムだよ。という言い分があるわけですが、派遣される医局員は大変です。公立病院に行けば「地方公務員」、国立病院に行けば「国家公務員」、私立病院に行けば「サラリーマン」、大学で「研究生」などの名目で無給で働く期間は「学生」となり、派遣される先によって身分がその都度変わってしまいます。勤続年数が寸断されてしまうので、最後の勤務先から支給される退職金はひとつの病院にずっと勤務した看護師などより遥かに少なくなってしまうという皮肉な現実があります。

このような背景もあり、一定の年齢になったり、自分の経験に自信が持てるようになると医局を辞めて転職し、安定した収入と職場で働きたいと考える先生が多くなるのです。

長くなりました。
それで、いつ辞めるかですが、残念ながら「今でしょう!」とはなりません。学位信仰は未だに残っていますが、今後その威光は漸減していくと思われます。今後は専門医志向がさらに高まると予想します。ですから、取れる専門医を取ってから辞められることを若い先生にはお勧め致します。

辞めると決めたら、次は円満に医局を辞めることを考えて下さい。医局とは喧嘩せず、スムーズに辞めることが先生の今後の医師人生を幸せなものにしてくれるはずです。

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