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海外留学で燃え尽き、医局を辞める

医局を辞める前の海外留学は鬼門である

ある先生から伺ったお話です。
先生の同級生のA先生は負けず嫌いで、毎日午前3時まで実験を頑張って学位を修得、その後も留学に備えてますます張り切っていました。大学内で出世を目指しているのなら海外留学が必須という暗黙の了解があるからです。晴れてグラントを得て留学しましたが、留学先で馴染めず精神的に参ってしまいました。最初は定期的に来ていたメールもいつしか来なくなり、たまに他愛もないメールを送ってみたものの返事なし。大丈夫かなと思っておられたようですが、事態はドンドン悪化していたようです。

突然、自ら留学を中止し、帰国していました。

A先生は医局に顔向け出来ないと悩み、自分で医局以外の病院を探して就職を決めました。ここまで準備したうえで教授に挨拶に行きました。A先生らしい責任感のある行動ですが、これが裏目に出てしまいます。その先生の所属された医局の教授は親分扱いしない子分を容赦しません。相談なしに留学を中断したことが教授の逆鱗に触れてしまいました。自分で就職先を決めたこともお気に召さないご様子。面罵こそされなかったものの、教授の眉間には皺が寄り、顔はひきつって、不満度100%。実際、どんな言葉が教授の口から語られたのかはA先生から聞いていないそうですが、キツイ嫌味を言われたようです。

その先生にA先生からのメールが届いたのはこの後でした。

海外にいたので教授に微妙な相談はできません。ただでさえ負けず嫌いなA先生が自分から精神を病んでしまったなどと教授に電話でうまく伝えられるはずもありません。
「私に相談してくれていれば上手に医局をやめる方法のアドバイスもできたのに。」
と知り合いの先生はおっしゃっていましたが、全て済んでからの報告だったようです。
「ちょっと寂しい気がした。もっと頼って欲しかった。」
「彼は悪い奴ではない、奴のプライドがそうさせたのだ。」
「自分で抱え込んでしまったことで事態がさらに悪化したのだ。」
このようにおっしゃっていました。

そのの直後、知り合いの先生は教授に会う機会があり、A先生のことを切り出されたそうでした。一瞬にして教授の表情が曇ったそうです。

「何も相談がなかったんだよ。」
「彼にはとても失望したよ。」

教授に指示を仰いで身の振り方を決めるという体裁を整えなかったのが余程腹に据えかねてたのだ、ということが見て取れたそうです。

別れ際、

「先生は同級生だ。彼のことは君にに頼んだよ。」

と言って教授は去って行ったそうです。先生は
「冷たいなあ・・・」
と思われたそうですが、医局の最高権力者としての意地なのかもしれません。

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