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医局を辞めるまでの道程は遠い

医局を辞めるまでの道程は遠い。

私のお知り合いの先生が医局をお辞めになった経緯を振り返ってみると、医局を辞めることの大変さ、その手間の程度がつくづく大きなものだったと思い出されます。ご自分のご所属になっている医局の決まりが不文律として存在すると思います。医局を辞める場合、辞めるどの程度前のタイミングで「医局を辞める宣言」をせねばならないのか。その点は要チェックです。

労働基準法では「退職願を提出後14日で退職OK」となっているのですが、医局を辞める場合には適用されないと思って臨みましょう。教授や医局長が黙っていませんし、残された患者の引き継ぎもあります。患者さんに迷惑を掛けてしまうことは避けねばなりません。円満な退局を目指すならば、医局の慣習は無視できないのです。

その先生の所属されていた医局には、3ヶ月前には通告するという暗黙のルールがありました。もちろん、成文化されたものではありません。教授のご機嫌次第で、もっと早い段階で表明しても雷が落ちることもありました。要は、教授の顔色をみることが決定的に重要なファクターであるということです。

その先生の場合、医局を辞める1年半前に決意されました。研究に興味が持てなかった、特に上からテーマを決められて自分の意志とは無関係に歯車として実験をさせられることが嫌で嫌で仕方がなかったのです。そして、もっと現実的な問題としては収入の低さがありました。医局に任せていては低収入の人生から脱却することは不可能だと悟られていました。

まず、行き先の病院を決めました。医局をやめる宣言をするときに、次の行き先が決まっていないと猛烈に引き止められる羽目に陥ると悟られていました。これは真実だろうと思っていました。

そんなわけで、知人には一切相談しないと決意なさいました。
すぐに開業するつもりもないし、専門医がいくつかあってもそんなもんじゃ大したことはないし箔もつかない、実力も反映しない。専門医はありふれているから、指導医や評議員になってなんぼのものです。そうならないと意味がない。専門医は最低限のレベルでしかないのです。

だから、医師を公募している大きな病院に行き先は限られました。履歴書を書いて、業績の目録を書いて、直接出願。程なくして面談の日取りが決まり、即採用が決定しました。

「明日からでも来てほしい。」

というのですが、それはまだ夏の終わりでした。現在勤務している医局の関連病院にも迷惑を掛けます。そのため、

「現在の勤務先に迷惑は掛けられない。」

という理由で、翌年の4月からにしていただきました。実際、そういったほうが社会常識のある人間と思ってもらえると思いますよ。相手は取る気まんまんだし、大きな病院だからすごく困っているわけでもないのです。紳士的に振る舞うことに徹しましょう。

勤務していた病院、医局の側に辞めることを通告したのはその年の12月です。3ヶ月以上の余裕を見て通告をしました。多少の嫌味は言われましたが、円満に医局を辞めることができました。

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