医局人事について
年が明け、来年度の医局人事が動く時期になりました。実際に医局に所属している医師は国内の半数に上ります。
最近では医局の権威は落ちてきたといわれていますが、まだまだ問題視されているのが医局の人事異動です。
もし医局で人事異動を言い渡されたら断ることはできるのでしょうか。
医局に所属するメリットやデメリットも合わせてご紹介します。
医局の人事異動の実態
一般病院ではみられませんが、大学病院特有のシステムが医局です。
医局は研究や地域医療、医師の育成という観点で重要な役割を担っていますが、その反面医師の勤務という面でデメリットになる部分もあります。
医学部卒業後の大学病院の研修の後、ほとんどの医師が自分の大学の医局に所属します。
医局制度は問題視されることも多いものの、医局に所属している医師は、未だに全体の約半数にのぼります。ひとむかし前と比べると医局員の数は減ってはいますが、日本の医学界での医局の性質が完全に抜けきったとはいえません。
民主的な医局運営に切り替わってきているところも多いですが、「白い巨塔」で描かれたような教授がトップとなり絶大な人事権を握っているところも未だにあります。
特にこうした人事の権力を握っているのが、外科系やマイナー系の診療科、そして地方の医局です。
教授の人事権が強い医局は、教授の裁量で人事異動がおこなわれ、本人の意思はほとんど尊重されません。とくに若手の医師は、地方の系列病院へ飛ばされることもかなり多いようです。もちろん臨床経験を多く積ませる、という意図もありますが、単に人員補充という目的の場合もあります。
つまり医局に所属していると、自分の思ったように病院への転院ができなかったり、または病院に残ったりができないということです。
単身であればそこまで心配する必要はないかもしれませんが、結婚して家族がいる場合はさまざまな問題があるので、異動には慎重にならざるを得ないでしょう。
医局人事に対して不満を抱く医師は多い
医局に所属することでデメリットになる人事ですが、予期しない人事異動、不安定な人事異動に不満を抱く医師は少なくありません。
実際、医師を対象としたあるアンケートでは、転職を考えたことがある医師約7割の内、約半分が医局を理由にしたもので、転職理由の中ではトップでした。
医師が医局人事に不満を抱く理由は、医局人事の頻度にもあります。
医局にもよりますが、人事異動がおこなわれるのは数年に一度であることが多いです。
いつ人事異動になってもおかしくないのと、次はどこにとばされるのか分からない不安を常に抱えながら勤務しなければならないので、とにかく心は落ち着きません。
家族がいる場合は、単身で次の勤務先に行くのか、一緒に行くのか、一緒に行く場合は学校などをどうするか、悩みの種は多くなります。
さらに、医局の人事異動の決定のプロセスは不透明であることも多く、決定に対して不公平だと感じる医師も多いです。前述のように教授の一存で決まることも多いので、教授に気に入られている、気に入られていないなど個人的な感情がまかり通る世界でもあります。
このように人事異動の不安と決定のプロセスについて不満を抱える医師は多いのですが、実は不満を表に出せない人も実際のところ同じように多いです。
不満を口に出せないのは、医局内の権力構造がゆえ。
不満をあらわにすることで、出世街道から外されたり、人事異動で不本意な場所にとばされたりしてしまうことも人事権に大いに影響力を持つ教授がいる医局では実際に起こり得ることなのです。
そのため、医局への不安をずっと抱えつつも、医局に所属している先生も多くいらっしゃいます。
医局の人事異動を断る時は医局を辞める時?
ご紹介したように、医局の人事異動は数年単位であることも多く、さらに教授が先頭に立っておこなわれるため透明性がないことも多いです。
実際のところサラリーマンの人事異動と比較しても理不尽な異動を告げられることがあります。
このような人事異動の不安を和らげるために、医局人事では医局員に事前にアンケートをとることもありますが、アンケート結果が必ずしも考慮される訳ではありませんし、決定した人事異動の命令はなかなか断ることができません。
どうしても人事異動を断ろうと考えるのであれば、医局を辞めることも視野に入れる必要があります。
もちろん医局を辞めるということは、大変な勇気がいることです。
退局してしまうと、研究の分野に戻ることは難しく、医師としてのキャリアに影響が出たりすることもあるでしょう。
しかし同時に、希望しない医局人事を受け病院での勤務を続け、体調を崩すだけでなく、最悪のケースでは過労死にまで追い込まれてしまうケースもあります。
無理をせずに、勇気を出して思い切って医局を辞めてみることも1つの選択肢として考えてみましょう。
医局を辞めるメリット・デメリット
ここまで転職の理由として多い医局の人事異動について取り上げてきましたが、それなりすっぱり医局を辞めれば良いかというとそう単純でもありません。
医局を辞めるかどうかは自分の置かれている状況、将来的なキャリアの展望を考えた上で決めるべきです。
医局にいることとのメリットとデメリットを比較しながら、医局に残るべきかどうか今一度考えてみましょう。
医局を辞めるメリット
医局を辞めることによって人事異動の不安から解放されるメリットがありますが、他にも医局を辞めることでのメリットがあります。
年収アップが期待できる
医局を辞めて大きく変わるのが年収です。
医局のある大学病院が研究機関であるということもありますが、一般病院では年収1,500~2,000万円の職務であっても、大学病院では年収1,000万円にも及ばないことは多いです。
さらに40代でも大学内の職階であれば年収700~800万円で頭打ちとなることも多く、教授などの一握りの重要なポストにならない限り、大きな年収アップは期待できません。
その反面、医局を辞めればより年収の高い一般病院などでの勤務を選択できます。
希望の条件や職務内容での勤務ができる
決められた人事ではなく、医局を辞めれば自身に勤務先の決定権があります。
そのため希望の条件や職務内容を考えての勤務が可能です。
継続的な勤務ができる
継続的に長く勤務できるメリットは、特に家族を持つ人には大きいです。
人事異動で一喜一憂することもないので、精神的な安定にも繋がります。
医局を辞めるデメリット
学位(博士号)がとれない
医局にいれば、大学院に進学して、医学博士号を取得することが出来ますが、医局を出てしまった場合、進学が難しくなります、なぜならば、進学先の大学院は医局のトップである教授の息が十分にかかったところだからです。
大学院には定員があり、希望者が全員進学できるわけではそもそもありません。なので、研究者として見込みのありそうな人が優先的に選出されます。医局を出てしまうと教授からは、「研究者として見込みがありそう」とは思われなくなり、選抜から漏れてしまうことが十分に考えられます。
研究で成果があげにくい
市中の病院に勤めた場合、勤務時間のほとんどが臨床になり、研究をするにも設備がなかったり、時間が取れないことが多くあります。どれだけ意欲が合っても、大学のような研究を専門とした設備で研究を行っている医師と比べると研究内容は小規模なものになってしまうことは避けられません。
そのため、医局に属していなくても学会で発表をすることは出来ますが、その成果は大きなものにはなりにくいです。
留学ができなくなる
海外の医療機関で最新の治療や研究について勉強したいと思うと、大学のネットワークなしには、留学することは出来ません。
医師免許も日本で取得したものが海外で通用するわけではありませんし、言語の壁ももちろんあります。そういった状況で、医師個人が自力で留学先を見つけ、なおかつ留学先で研究に励む、ということは至難の業だといえるでしょう。
まとめ
医師の転職理由のトップにもあがる医局で不安を感じやすいのが、医局人事です。
数年おきにどこに飛ばされるか分からない人事異動は精神的にもあまり良いとはいえません。
しかし、そんな医局も必ずしも所属していることが良くないという訳ではありません。
研究や留学、専門医ライセンスの取得の面でメリットがあります。
研究や教育の観点で極めたいなら医局に所属している方が良いですが、年収アップや将来の安定を考えるなら医局を離れることも考えるべきです。
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