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TPPで日本の医療はどう変わるのか

TPP参加問題が世間を賑わしています。この度出された日米共同声明には、
All goods would be subject to negotiation. とはっきり書かれており、「全品目が交渉の対象になる」という意味になります。
「be subject to」はそのまま訳せば「・・・に従属する」となる、受動態で使用する慣用句です。
「be subject to」というと、ポツダム宣言において
The authority of the Emperor and the Japanese Government to rule the state shall be subject to the Supreme Commander for the Allied Powers という一節をどう解釈するかで軍部と外務省が揉めたのを思い出します。

1945年の夏、陸軍省など軍部は、「天皇及び日本国政府の国家統治の権限は連合軍成功司令官に「隷属する」と訳し、国体護持のために降伏を拒否した一方、外務省は「隷属する」ではなく「制限の下に置かるる」と訳しました。そして、他に「日本国政府の確定的形態はポツダム宣言に遵い、日本国国民の自由に表明する意思に依り決定せらるべきものとする」という箇所があったため、受諾派は「これは国体護持の保証を意味しているとして」受諾を主張しました。議論は最後まで紛糾したものの、最後は昭和天皇の強い意志で受諾を決めたのです。

今回の主語はAll goods であり、日本では無いからポツダム宣言とは違いますが、終戦時の外務省の絶妙な訳文「制限の下に置かるる」のセンスには脱帽です。露骨な外圧の言葉を国内向けにオブラートに包んだ言い方をする代表例と言えるだろう。そのスピリットはいまだに健在だからです。

今回の日米共同声明を読んでみると、上述のように「全品目が交渉の対象になる」とはっきり書いてある一方で、日本のマスコミが印象を醸し出そうとしているような、「農業や保険は対象外」とは全く書かれていません。「聖域」と安倍首相が強調する文言も英語ではsensitivityです。佐々江駐米大使らがとりまとめに動き、sensitivity(重要品目)が存在するとの文言で落ちついたのは首脳会談の直前でした。日本国内向けのエクスキューズがどうしても欲しかったわけです。国内向けのオブラートに包んだ「制限の下に置かるる」のスピリットが健在なのです。終戦後67年経っても全然変わらない体質に驚きます。

我々が気になる懸案事項ですが、TPP協定交渉の現状(内閣官房、平成25年2月)にて触れられていて(リンク先PDFの8ページ目)、下記2点に絞られます。

(3) 公的な医療保険を受けられる範囲が縮小されてしまうのではないか。
(4) 質の低い外国人専門家(医師・弁護士等)や単純労働者が大量に流入するのではないか。

日本人患者は日本語の話せる医師に診て貰いたいから、日本人医師が駆逐されるなんて杞憂だという意見もありますが、実際のところどうなのでしょうか。個人的には、日本語という鉄壁の非関税障壁に守られているから大丈夫なのではないかと思いたいところです。

とはいえ、TPPでは労働力の自由化も図られます。米国から弁護士或いは医師が流入してくる可能性は否定出来ません。あまり考えたくはありませんが、「日本語が非関税障壁だ」とされてしまえば、日本はフィリピンのようになるかも知れません。即ち、「国語は日本語だが、公用語は英語」です。「すべての公式書類に英語を併記することを義務付ける」となってしまうかも知れず、弁護士や医師国家試験なども英語で認めろと言ってくることも十分考えられるのです。

そうなれば、我々は防戦一方というわけではなく海外進出の可能性も出てくるわけで、決して悪いことばかりではありません。

今回の Joint Statement by the United States and Japan の第三段目の原文を示します。

The two Governments will continue their bilateral consultations with respect to Japan’s possible interest in joining the TPP. While progress has been made in these consultations, more work remains to be done, including addressing outstanding concerns with respect to the automotive and insurance sectors, addressing other non-tariff measures, and completing work regarding meeting the high TPP standards.

この段では、二国間協議で日本が自動車と保険とその他の非関税措置に対処することを確認しています。これまでの米側の要求と何も変わらず、日本側に「なされるべき更なる作業が残されている」ことで合意した屈辱的な内容です。今回の会談で日本側が何か得たかといえば、何も得てはいません。交渉参加の入り口(事前協議)で、米国から保険と自動車とその他の非関税措置に対処するよう迫られている事実は民主党政権時代から変わりありません。保険に関しても、がん保険参入を見送ったのは民主党政権時代の日本郵政だが、TPP共同声明には「保険部門に関する残された懸案事項に対処」と明示、つまり共同声明は、かんぽががん保険参入を見送っただけでは足りないと言っているのです。

米国はこれまで日本に混合診療の全面解禁を要求してきた。TPPとこれをリンクさせる見解も多く見られますが、こういうニュースもあります。1年前の古いニュースですが、混合診療はTPPで対象外にする方針といいます。

とはいうものの、本当に対象外なのかどうかは厚生労働省内でも半信半疑のようです。最後まで安心はできません。

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