中小病院を潰す政策 「持ち株法人制度」で病院再編へ でも触れましたが、国は病床数削減に本気で取り組みます。「病床が多い都道府県ほど医療費がかさむ」というのは正論です。47都道府県で最も人口当たり病床数が多い高知県は、1人当たり医療費も全国で最も高く、全国平均の1.3倍。まあ、そうなりますよね。入院が必要な患者さんが入院していれば、やるべきことはいくらでもあります。
データはやや古いですが、厚生労働省のデータ(平成17年版厚生労働白書)によれば。医療費は人口あたりの病床数、平均在院日数と正の相関があることがわかります。(下記URLからDownload可能)
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/05/dl/1-2n.pdf
厚生労働省はDPCを導入することで平均在院日数の短縮に努める一方で、病床数の削減にも本気で取り組み始めました。ベッドが無ければ入院治療はできません。少々乱暴な言い方になりますが、医療費を減らしたければベッドを削ってしまえばよいのです。
もちろん、一律に削ってしまうのは考えものです。急性期医療が必要な患者さんは一定数おり、努力すれば減るというものでもありません。高度救急救命ともうワンランク下の急性期病床は維持すべきです。問題なのは実際は療養型に等しいことしかしていないのに、加算目的で「なんちゃって急性期病床」を名乗る病院が増えすぎたことです。国はここを削ろうとしています。ターゲットは100-200床クラスのケアミックス病院でしょうか。
増田寛也東大客員教授が提言する、大学病院を核とする「持ち株会社型」の医療機関の再編案。大学の付属病院を大学と切り離して別の非営利法人として、その下に地域の病院や老人ホームなどをぶら下げる。これも、ターゲットは「地域の病院」、即ち前出の100-200床クラスのケアミックス病院です。厳しいリストラを迫ります。
「同じエリアで中小の民間病院がめいめいにCTやMRIを揃えるのはムダ使いだ。」
「各々の病院に各分野の専門医が散在していたら結局何もできないだろう。計画配置するぞ。」
「ライバル病院同士でも、空きベッドがあれば融通し合えよ。」
民間病院・個人病院であっても、箸の上げ下ろしまでお上に指示されるようになってしまいます。
このクラスの病院の経営者は厳しい現実に直面することになるでしょう。もちろん、勤務する先生もです。逃げ出すなら今かも知れません。
大学病院を核とした持株会社型病院再編案。