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中小病院を潰す政策 「持ち株法人制度」で病院再編へ

以前お伝えした、地域の複数病院をホールディングカンパニー(持ち株会社)型化した地域独占の新型医療法人(非営利)の設置を認める政策を着実に進めています。2015年、来年にも始まりそうなのです 。

今回の日経記事にはありませんが、昨年4月に毎日新聞で報道された内容によれば今回の施策のために「地域医療・包括ケア創生基金」(仮称)を新設し、「過当競争」を抑えるためいうことで、行政が地域医療機関・介護施設をまとめて補助金を投入する予定となっています。

新・臨床研修制度で弱体化してしまった医局制度。

医局制度の弊害は少なくありませんが、医師が人事権を握っていたのでまだ良かったのかも知れません。

大学病院、公立病院も傘下に入れる持ち株会社型を作るといいますが、乗り越えるべきハードルは高いです。国立大学は独立行政法人化されているから良いものの、県立病院、市町村立病院を自治体から切り離すのでしょうか。まあ、公務員の身分を捨てられた先生方が堂々とアルバイトができて助かる先生は多いので良いことかも知れません。でも、喜ぶのはまだ早い。

この政策の主眼は病院減らしです。記事にもあるように日本は病院過剰、それも中小病院過剰です。2014年の診療報酬改定でも中小病院狙い撃ちの方針が鮮明に打ち出されています。
「同じエリアで中小の民間病院がめいめいにCTやMRIを揃えるのはムダ使いだ。」
「各々の病院に各分野の専門医が散在していたら結局何もできないだろう。計画配置するぞ。」
「ライバル病院同士でも、空きベッドがあれば融通し合えよ。」
余剰な病床のリストラです。

中小病院は減ります。常勤医3名の往診クリニックに転換させたいのでしょう。

中小病院の常勤医は要らなくなり、当直アルバイトも外来アルバイトも減ります。医師紹介会社のアルバイト案件を見て下さい。日勤、当直、日当直のアルバイトを供給しているのはこれらの階層の医療機関が大半です。医師のアルバイトが不足する時代が来るでしょう。公立病院の先生がアルバイトできる日が来ても、その頃には値崩れしています。

あぶれた医師の流れる先はスキルの要らない検診、コンタクトなどですが、既にダンピングが横行して値崩れしているところにさらなる追い打ちを掛けることになります。死守してきた「時給1万円の壁」はやすやすと突破され、7千円、5千円へとじりじりと後退せざるを得なくなるでしょう。フリーランス医師は正念場を迎えます。高いスキルとコミュニケーション力を持った先生は高給を維持できますが、大多数は没落するでしょう。

中小病院が救急車を取らなくなるので救急車は大きな病院に集まります。基幹病院の救急外来は悲惨になりそうです。でも、勤務医で生き残ろうとしたら薄給でも基幹病院に残るしかありません。これまで年収2,000万円は超えた中小病院勤務医が減ってしまうので勤務医の平均給与水準は下がります。この動きを見て、基幹病院に残る先生が増えるでしょう。

日経も書いているように、病院のM&Aが進んで、グループ化が進みそうです。日経の記事を読んで不安に思うのは、持ち株会社型の下に大学病院と民間病院が同列に並んでいることです。経営戦略のある私大病院ならともかく、経営に疎い国立大学病院がこのなかに放り込まれたら大手病院グループに組み伏せられてしまうのではないでしょうか。プライドが高く、研究ばかりやっている先生が持ち回りで病院長や学長をしている組織が、ビジネス感覚に優れた民間のグループ病院と互角に戦えるとはとても思えません。

医師以外が病院理事長になれるようにルール改正しようという動きもあります。
医師の裁量権を守るために、大学病院、医局制度には頑張っていただきたいところです。大同団結して対処していただきたい。大学は今回の計画を超越した存在として維持しないとグループ病院に席巻されてしまい、大学病院であっても民間人の指図を受ける「ただの大きな病院」になってしまいます。企業立のグループ病院の理事長は医師以外になっていくでしょうから、その流れが決定的になってしまえば、企業立の病院の医師以外の理事長の下で働くことになる可能性が高いです。それは避けないと、医師の裁量権が侵犯されることになってしまいます。

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