埼玉県の医師不足問題は深刻。遠征系アルバイトは埼玉へ。
2013年1月、救急搬送中の埼玉・久喜市の男性を25の病院が受け入れできず死亡されるという事例がありました。FNNが亡くなった男性が通院していた久喜市の済生会栗橋病院を取材しています。今回の事例、医師不足問題を提唱している本田氏の病院の患者さんであったことが何とも皮肉な話です。
【埼玉】深刻化する医師不足、首都圏の救急医療の現場に密着しました
FNN 2013/5/8首都圏で深刻化する医師不足と、救急医療の危機的な状況。2013年1月、救急搬送中の埼玉・久喜市の男性を、25の病院が受け入れできず、男性は、およそ3時間後に死亡しました。
この男性のかかりつけだった埼玉県の病院を密着取材しました。
埼玉・久喜市の病院に救急搬送をされてきたのは、背中に激しい痛みを訴える中年男性。その10分後、隣接する茨城県からも、救急車が到着した。
埼玉県済生会栗橋病院の「地域救急センター」は、入院や手術を必要とする救急患者に、24時間対応している。
この夜の当直は、消化器内科の五十嵐悠一医師(32)。ここでは基本的に、当直の医師が1人で、救急搬送と夜間の救急外来の両方に対応している。理由は、慢性的な医師不足にある。
埼玉県済生会栗橋病院消化器内科の五十嵐医師は「スタッフの数、医者の数が少ないので、責任感がやっぱり重いですね。個人の印象としては、『ぎりぎりで、なんとか回っている』というところが現実だと思いますね」と話した。
意識障害の10代女性。
呼びかけに全く反応せず、危ぶまれたが、検査の結果、軽い急性アルコール中毒と判明した。この夜、5人目の救急搬送は、脳梗塞疑いの患者だった。
後遺症の可能性がある、対応が難しい疾患。消化器内科の五十嵐医師にとって、脳梗塞は専門外だが、当直では、基本的に全ての患者を診なければならない。
このような態勢の病院は、決して少なくないという。
五十嵐医師は「目の前で患者さんが具合悪くなってしまっているときに、『もう本当に自分しかいない』と思うと...。怖いと思ったこと、まあ、本当、いくらでもありますけどね」と話した。
五十嵐医師は、脳梗塞疑いの患者を集中治療室で管理することにした。あまり知られていないが、埼玉県の人口10万人あたりの医師数は、全国最下位の142人。
さらに、茨城県、千葉県がワースト3を占め、首都圏全体の医師不足が深刻化している。夜が明けて、腹部に刺すような痛みを訴える、40代男性が搬送されてきた。男性は「(イカとか、シメサバとか食べてない?)生は食べてないですね」と話した。寄生虫や食中毒の可能性は低い。痛みの原因をなかなか特定できない、五十嵐医師。
この朝、出勤してきた外科チームに、協力を仰いだ。CT画像を確認した本田 宏医師は、異変を見つけた。
埼玉県済生会栗橋病院外科・院長補佐の本田宏医師は「(腸が)捻転している可能性が否定できないね」と話した。本田医師は、男性に「おなかを開けて、ちゃんと診て、(腸捻転を)戻す治療をした方がいいと思います。痛いですもんね、ちょっとこのままじゃ、ちょっともたないですよね?」と話した。
搬送から3時間後、緊急手術が始まった。
通常の診療と並行して、突発的な救急患者に対応する外科チーム。こうしたことは日常茶飯事だが、負担は大きい。本田医師の予測通り、腸閉塞になっていた男性。外科手術による素早い処置が必要なケースだった。
本田医師は「よかった。(腹部を)開けて大正解でした」と話した。
緊急手術は無事に終了。
男性は、2つの病院から受け入れ不能と言われ、ここに運ばれてきた。男性の父親は「(搬送不能の理由を)医師がいないとか、混んでいるとか。こっちはもう腹痛くて、きりきり舞いしているのにね」と話した。栗橋病院では、この4年間、受け入れ不能は年間900件余りと、ほぼ同じ。
一方、救急搬送は、年間700件以上も急増している。現場がいくら努力しても、追いつかない状況だという。
五十嵐医師は「自分も、どうしてもいろんな事情で、(搬送を)受け入れできなかったこととかもあるので。根本的なもの(医師不足)を解決しないと、今後も同じようなことが起きてしまうんじゃないかと思いますね」と話した。
この夜、五十嵐医師が対応したのは、救急搬送9人と、救急外来に訪れた12人。当直明けは一睡もせず、通常の勤務に就いていた。