医師優遇税制見直し
政府税制調査会は16日、医師や病院などの税制優遇措置を縮小・廃止する検討に入りました。所得税や法人税の納付額を算出する際、実際の経費以上の額を経費として認めるもの。
会計検査院が改善を求めていました。厚生労働省は見直しに慎重で、2012年度税制改正で具体的な
縮小・廃止にまで踏み込むのは難しいものの、政府税調では12月にまとめる2012年度の税制改正大綱で将来の見直しの方向性を盛り込みたい考えです。
見直される医師優遇措置
年間の診療報酬(保険診療の対象分)が5,000万円以下の小規模な開業医や医療法人が対象です。納税事務が多いと医療業務に支障が生じかねないとの配慮から、実際にかかった経費の代わりに、診療報酬に応じて57-72%を「概算経費」とみなすことができる制度です。
診療報酬から経費を差し引いた額が、開業医の所得税や医療法人の法人税の課税対象の所得(課税所得)となりますが、実際の経費をもとに納税することも可能です。
会計検査院が全国54税務署を通じて調査したところでは、概算経費率(平均70.4%)と実際の経費率(51.5%)の差が大きいことがわかりました。適用者の多くが実際に経費を計算したうえで、概算経費と比べて有利な方を選択している実態も判明しました。健康保険の対象でない高額な自由診療で所得を得ているのに、特例の適用を受けているケースもあるようです。
医師優遇税制の見直しで、勤務医への出戻りが増えるでしょう。
国の医師増産体制と相俟って、勤務医の供給過剰が進むことが予想されます。医師アルバイトの給与水準低下は不可避でしょう。