峰隆之氏、医師の派遣業解禁を提案
東京大学法科大学院客員教授の峰隆之氏が医師の派遣業解禁を提案しています。労働者派遣法で医療職が派遣就業禁止職種になっている現状を打破して大学医局や基幹病院、地域医師会や看護協会を母体とした組織に、派遣人材を登録する会社を作らせることを提案しています。
彼の真意は、人材が所属する「本籍」の医療機関は固定したうえで柔軟に他へ派遣できるように法令を整備することにあります。
この考えは評価できます。同じ医療機関にずっといれば新しいことを覚えることも難しく、やる気はあるのに学ぶ機会を奪われているケースは非常に多いでしょう。公務員医師が他施設で経験を積めない不条理もこれで(国家公務員法の改正が併せて必要ですが)解消できます。これが実現できれば医師偏在の緩和に役立ちます。
「誰がこんな所に行くんだよ!」
というような医療機関であっても、期間限定などでこれまでよりも柔軟に派遣できれば行ってくれる先生も増えます。
しかし、彼の提案は「大学医局や基幹病院、地域医師会や看護協会を母体とした組織に、派遣人材を登録する会社を作らせる」ことなので、マチマチな規模の派遣会社が雨後の筍のようにできて、ただでさえ医師紹介会社が乱立して混沌とした現状をさらに悪化させることにならないか心配です。
大学医局と基幹病院の思惑の相違は少ないでしょうが、医師会は前者とは思惑がかなり異なります。両者が共同で作る派遣会社は空中分解の恐れがありますし、別々に派遣会社を作れば両陣営が正面衝突を起こすでしょう。大学医局系、医師会系、その他系の三つ巴の戦いになるでしょうが、戦国時代は既に10年以上続いています。一日でも早く平和な時代になって欲しいものです。
政治が余計な介入をするくらいなら医局の支配力を再度強化させたほうが乱立が防げて良いのではないでしょうか。まあ、これに賛成する先生はいらっしゃらないと思いますが。
峰隆之氏も医局制度の復活はあり得ないとお考えのようです。ウイットに富んだ下記の一節から読み取れます。「善意」って・・・タダより高いものはない、ということですね。
”医療機関の直接雇用を医局が善意で斡旋あっせんしているにすぎない。「善意」という見えないものに頼ることは、好ましくない支配関係を招く可能性がある。”